宝物をもっているか、命を使い切る熱は流れているか
7月の新月。
四年の一学期が終わりました。
猛暑の中、朝から発表会にお立会いくださった方、ありがとうございます。
シューマンの「ロマンツェ」とベートーヴェンの「悲愴第二楽章」をシュタイナーフォルムで。
エルゼ・クリンクさんが舞台で踊ったという「シラーの頭蓋骨を眺めて」に徹底的に取り組めたのは、ほんとうによい経験でした。
シューマンの「ウィーンの謝肉祭」では、和音の体をつくりました。使えていない体のクセが、和音でははっきり見えてしまいます。
そして「中臣の祓詞」を地水空火、感覚と結びつけて。これは先生にもみなさんにもお褒めの言葉をいただくことができました。
雨月物語「浅茅が宿」は、日本語の体で動くこと。
ベートーヴェンの「テンペスト第一楽章」をトリオで。この素晴らしい曲が今年の大きな課題です。
わたしたち人間の本質と進化を表している「ECCE HOMO」は、深々と内側に刻まれる何かを感じました。これから歩む道の、力そのものを与えてくれるような。
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体という土壌に植え込んでいく、たくさんの種や苗。
それがこの作品たちです。
これだけのことに日々取り組ませてもらっているのは、奇跡的だなと思います。
ふだんはボディートーカーとしての仕事の顔ばかりで書いていますが、窮屈になってきたので、これまでの日々を統合し、ひとつの収穫に向かう時期がやってきたようです。
すぐには体と言葉とをひとつにはできない、わたしの手にあまるほどの大がかりな統合ですが、目印の杭を埋め込んでいく作業のため、今朝はたくさんの本も持ち込んでカフェにいます。
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わたしにとっては、圧倒的に「見えない世界」のほうが得意です。
得意といえるのは、封印してきたことを意識的に解放し、自分にも人にも役立てる力に変えてきたからです。
この三年半は、不得意だと思い込んできた「見えるカラダ」に取り組んできました。
通常シューレでは、筋肉的なものを精神世界にまで広げていく作業をやるのでしょうが、わたしだけあべこべに進んできた感があります。
見えない世界が海上の空だとしたら、見えるカラダをつくることは、空から海に潜って深い海底に触れにいくような作業です。
魂と結びついた肉体。
その海底のひとつにタッチできた感触があるので、これからは見えるカラダとともに、得意分野のほうへと飛翔できればいいな。
これができると、いろんな海底、海、空を、たいそうおもしろく旅できそうだ!
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言葉は、見えない世界に属します。
いくらでも内実のないことを書けてもしまうし、しかしカラダに欠かせないものでもあります。
統合作業のひとつとして、ボディーワーカーとしての身体観をレポートにまとめ、読んでいただけるものにしようと考えています。これは本にしたい。
骨子は、シュタイナーの身体観を、100年前の言葉から、現代の言葉に置き換えること。
これは西洋医学だけではまったく足らず、かといってヌーソロジーのようなものでもなく、むしろダンス畑の人々がカラダ使いの中で取り組んできたことや、ボディーワークの新しい潮流、そしてボディートークの統合的な身体観から、自分の血肉にできたことを編み直していくことになると思います。
血肉の「血」は、先生から教わっている原血液、東洋医学の血(ケツ)、千島学説の腸造血説と細胞新生説。
血肉の「肉」は、日本語を話すカラダであることの感性の領域。
「細胞の最初の発生はバクテリアの融合によって生じたものだから、細胞の死によって逆の現象が起こり、細胞はもとのバクテリアに解体する」
という千島教授の言葉を、わたしはふたつの方向から命を吹き込みたいのです。
ひとつはボディートークの最先端を走るマイクロバイオームから。
もうひとつは、融合と解体を、八百万の神々の御働きと讃美歌に詠みあげてきた古事記の世界から。
命を吹き込むには、カラダをもってオイリュトミーをやることが最も根源的。
わたしにとって学校とは、学び舎でも稽古場でもなく、その本質は「命を吹き込む現場」であることで、そのために毎日通っています。
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これらが、わたしが今やっていることの全てで、宝物たち。
命を使い切る熱です。
「自分の大切なものは、それを表すと取り上げられてしまう」
そんな思い込みが強かったので、いつも平気で無感動なふりをしてきたけど、それはもう手放していいや。
誰がなんと言おうと、宝物ぜんぶ。
わたしの強い意志と、透明な思考と、閉じてきた感情が出会う場。
カラダとは微細な生き物たちの複合体であり、わたしという意識が、存在をまとめ上げている。
彼らは蠢き、彼女らは歌い、それらは神迎える。
上下が出会う時、すべてが海に溶け込み、永遠の呼吸に収斂する。
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