阿吽の声と感情、感情を消化する内臓
- 2025.02.20
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「聴き流し 統合生理学」というAudioコンテンツを作ろうと、これまで作ってきた講座資料をもとに、スクリプトの準備をはじめました。
目次を構想しつつ、最初に取り上げるのは何にしようかなとアイディア袋を探ると、やっぱり「声の力」から始めるのがふさわしかろうと思うのです。
解剖生理学は、人間の見える体と生命現象を理解するものですが、統合生理学は見えない体や体に働きかける生命力の流れ、感情、心理も取り上げます。
「見えないもの」と「見えるもの」との統合というと、とたんに大風呂敷なテーマになっちゃいますね。
けれど「声の力」は、この大風呂敷な統合テーマを、最もミニマムに扱うことができます。
声の状態の一番シンプルな区分は、「音の消失」と「音の出現」です。
「消失」から「出現」の間に「静寂の点」があり、静寂の点は「声の原動力」を内包しています。

意味化された世界を祓い、再構築したい時、このミニマムな原初の音声を意識化することで、万物の源につながります。
意味化され組織化された世界のうち、人体と言葉との照応を解説しているのが、トニー・ネイダーの『人間の生理』。
サンスクリット語の『ヴェーダ』を音節を人体に対応させているので、日本人にはなかなかとっつきにくいものがあります。
サンスクリット語もやってみましたが、やっぱり日本語でやりたいな、というのが、ここ十年のわたしの課題でした。
オイリュトミーという身体技法は、言葉に内包された発声力=生命力を、体で彫刻して見えるものにしてくれるので、頭と体の統合もでき、素晴らしいものだなと感じてました。
ただし、生理学と統合させようとすると、施術の実践の場では感覚的にしっくりくるものの、言葉でまとめようとすると、うんざりするほど複雑になってしまい、今のところまだ、わたしの手元には、複雑な講座資料だけがあります。こいつをRewriteしたい。
「アの出現」「消失のン」
声の中で、最も原始的な音の一つに、「ア」があります。
音の消失は「ン」で表すことができ、これはハミングのような「ン」ではなく、「アウン」「ナム」「オウム」のような聖音を指します。

原始的な声は、意味よりも感情や詠嘆を伝えます。
感情には喜びや怒り、恐れなどのいくつかのアスペクトがあり、神秘学や東洋医学では、それぞれの感情に惑星や内臓が照応しています。
「出現」と「消失」のインパルスは、神経系の働きへも説明します。インパルスを、ただの情報刺激ととらえると、通常の生理学になり、「静寂」や「揺らぎ」を感じようとすると、ホリスティックな領域になります。
「統合生理学」は、こんなふうに一つのきっかけから、人体の生理に分け入っていこうかという試みです。
「ア」の感情は、喜びでも悲しみでも世界共通で発せらるでしょう。
悲しみは、喜びと同じく心臓がその感覚を引き受けます。
よく、「肝臓は怒りの臓器」と言いますが、肝臓が怒りのエネルギーを扱いやすい、ということです。
それらの臓器だけが、悲しみや怒りを扱うわけではありません。
心臓が張り裂けるほどの悲しみを抱えきれなくなると、他の臓器が引き受けます。頭部に行くと、もはや消化できなくなり、気が狂います。
怒りは、腹を立てたり頭にきたりしている分にはうまく発散されますが、腎臓ではもう浮かび上がることができず、腎臓は機能不全に陥ります。
怒りは、「ウ」や「オ」で発しやすいですね。
感情をふさわしい母音で発し、その「出現」と「消失」、「静寂の点」を味わおうとすると、感情は豊かで良質なエネルギーとして体で働いてくれるようになります。
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