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復活のコツと『アルケミスト』

復活のコツと『アルケミスト』

ひとりで朝練中、「復活のコツ」という言葉が浮かんだので、トピックにしてみます。
自分の体について「硬い」「柔らかい」という時、みなさんは何と比較していますか?
バレリーナ?ナメクジ?電柱?
ワーク中の他人?本来の自分のあるべき姿?昨日の自分?

例えば、泌尿生殖器にトラブルがあれば、腰部の柔軟性に制限がかかることがあります。
心臓に負担がかかりすぎると、胸椎、鎖骨、肋骨に影響が出ます。
体にとって制限とは、保護をする意味合いが大きいのです。この時、脳には二つのパターンが反映されています。

一つは、制限・保護の元となった疾患やケガのパターン。内臓かもしれないし、使い方の意識かもしれないし、外傷かもしれません。どうしてその疾患やケガを引き寄せたのか、というパターンも含まれます。

もう一つは、制限・保護に関わる筋系や骨格系の動きのパターンです。
ここでようやく可動域の制限パターン、いわゆる「体カタイ」が生じます。

わたし自身は、卵巣と子宮、心臓に疾患が出たので、腰部・胸部の可動域は絶賛取り組み中の案件です。

結論から言うと、復活のコツは、この二つのパターンを上書きアップデートすること。パターンとはどう繰り返すかのプログラムなので、脳にあります。習得プロセスによって、大脳皮質、小脳、前頭前野、心臓脳などの部門が関わっています。

運動すると、脳には強い報酬系(快)が生じるので、制限や保護、安静が必要な時を除いて、ふつうにやれば楽しくスッキリします。
けれども、負の比較評価や「体カタイ」パターンの繰り返しで、報酬系が働かなくなると、どんなに運動を続けても、体は制限の中に戻ろうとします。自分と戦っている状態。運動も体も嫌いになります。

二つのパターンの上書きアップデートは、方法が真逆なのが面白いところ!
コツは、比較対象を意識的に持つことです。

(1)制限・保護の元となった疾患やケガのパターン
ワークの動きの中で、今の自分の動きと、こうなりたい自分の動きを比べる。
綺麗なヨガ教師やバレリーナみたいに動きたかったら、今の自分と比べて、その方向性を作ります。どちらに伸展したいのか。どちらに収縮したいのか。
まあ最初はたいがいガッカリするけど、比較による方向性とギャップを、脳に作ってあげます。

(2)制限・保護に関わっている筋系や骨格系の動きのパターン
ワークの前と後を比べる。
動きであれば方向性に1ミリでも近づいたか。
詰まりや重さなら、それらを軽く感じられたか。
動きはスムースか。
もし見れるなら、アライメント(関節などの配置)は力学的に正しいか。

動きやアライメントは、わからないうちはトレーナーに客観的に見てもらったらいいと思います。
全部よくしようとせず、当社比1ミリでOK。
ほんの5分かそこら。呼吸だけなら1分もかかりません。ぐるぐる関節を回したり揉んだりして確かめると、もう微細な違いはわからないので、静かに感じます。
1ミリを心地よく感じたら、自分をほめてあげましょう。
報酬系が働くので、その夜、脳は新しいパターンを習得しようとします。

新しいパターン選択の回路ができたとして、その回路は(1)ではどう働くでしょうか。

(1)では、現状と夢とを比べ、方向性とギャップを作りました。
通常、叶いそうにない夢を前にすると、脳は尻尾を巻いて逃げるか、やらない言い訳をゴマンと作って諦めようとします。

わたしたちは多くの時間を物理空間にリアリティを持って過ごしているので、脳幹や体の無意識パターンの奴隷になっています。
しかし今は、制限・保護に関わっているパターンが変化したので、制限・保護の元となったパターンも変化します。脳は、ギャップの向こう側の世界、夢の世界を反映しようと動き出します。

不思議でもなんでもなく、脳の隠された機能の使い方です。
わたしたちは通常、無意識に夢に反発して生きているいるともいえます。

まとめると、(1)の情報空間ではどこまでも夢をみて、(2)の物理空間では当社比の心地よさを探しにいく。

人によっては、元どおりにはならないかもしれないし、バレエ団には身長や年齢の制限があるかもしれない。
でも、夢が遠ければ遠いほど、この二つを同時にやることで、限りないパワーが身につきます。

ワークの今と夢を比べる。ワークの前と後を比べる。
そのことだけに集中することは、過去に囚われること、他人と比べること、自己肯定感があるだのないだのと言うことなど諸々のあらゆるパワーレスに気づかせ、遠ざけてくれます。

ストレッチなどのシンプルなワークほどやりやすいので、試してみてください。

10月からスタートした「カラダの内界と外界をめぐる血液の旅 実践編」では、今、感覚の使い方を練習しながら、情報空間と物理空間の区別を体験しています。

まだ旅の道具の使い方を本格的にやり始めたばかりですが、道具はだんだんと軽く、手に馴染んでくるでしょう。

パウロ・コエーリョの小説『アルケミスト』には、これを同じことが書いてあります。

少年は、幸福になれる秘訣を探して、賢者の宮殿にたどり着きました。
賢者は、油を入れたスプーンを少年に渡して、先に美しい宮殿を見物してくるように言います。「歩き回る間、スプーンの油をこぼさないように」と付け加えて。

油をこぼさないことばかりに気を取られていた少年は、戻ってきて、宮殿の何も目に入らなかった、と賢者に言いました。

次に賢者は、もう一度しっかりと、美しい庭や美術品を見てくるように言いました。少年は感動して戻ってきたけれど、スプーンの油は一滴も残っていません。

賢者はこう言います。
『幸福の秘密とは、世界のすべてのすばらしさを味わい、しかもスプーンの油のことを忘れないことだよ』

わたしたちはすでに、「復活のコツ」を知っていますよね。
夢を広げることと1ミリの当社比を、同時にやること。
幸福の秘密にとても似ています。

自分にとっての世界のすばらしさとは何でしょうか。
体験したいことも、(1)と(2)をワークの中で意識していくことで、変化するのを感じるかもしれません。
脳のパターンを夢の世界、ギャップの向こう側へとアップデートする時、そこには現状否定の意図は含まれていないのです。