「体のしくみとはたらき」 #2 感覚系 – 感覚のハイジャックに気づく
- 2025.03.30
- 新連載! 体のしくみとはたらき └ 02 感覚系

「見る、触れる、味わう、聴く、嗅ぐ」のはたらきをもつ感覚系。
環境に翻弄されるか、環境から豊かさを受け取るかは、感覚系の使い方次第です。
前回の記事では、感覚系にフィルタリングがかかっているというお話をしました。
目の前の出来事ではなく、自らの思いによって恐れや不安が強い場合、感覚器官と脳をつなぐ経路が、何かにハイジャックされているかもしれません。
入ってくる感覚にフィルターをかけるのは、脳のど真ん中にある「視床」という神経核。
次に、「扁桃体」が、入ってきた情報が「危険かどうか」をチェックします。
「扁桃体」は耳の上、側頭葉の内側にある神経核群で、記憶や感情に深く関わっています。
「危険かどうか」は、この記憶のデータベースに照らして判断されます。
人によって気持ちや行動が大きく異なるのは、この脳の中の、個性あふれる番人たちのせいです。
頭の中の番人たちなので、「エゴ(小さな自分)の心」を担っています。
わたしは彼らを「門番」と呼んでいますが、彼らは「あなたの社長になりたがっている」のです。
あなたの人生の椅子は、あなたのものです。
恐れや不安は、安全確認のために大切な感情ですが、肝心のデータベースが古いか新しいかは、あなた以外、誰もチェックしてくれません。
わたし自身、古くなった役立たずの番人が、いつのまにか社長の椅子にふんぞりかえっていることに、何度も気づかされました。
役に立たない恐れや不安がない、またはそれに気づいているだけでも、目の前のことに対する集中力が格段に上がります。
番人たちを社長の椅子から引きずりおろすための、準備のワークをやってみましょう!
「耳をすます」という、もっともシンプルなワークは、最初にご紹介しました。「体のしくみとはたらき」#0 はじめに
ここでは、感覚系のハイジャックに気づくためのワークを紹介します。
手順は以下の三つ。
- 感覚の感度を上げる
- 感覚を味わい、言葉する
- 感覚の「差分」をとる
感覚過敏の人は、ふだんから感覚を閉じがちにして、身を守ろうとしていることが多いです。
わざと砂漠っぽくしています。
感覚を閉じたとき、自分の意識が内側に向いていると、無表情で冷たく見えます。意識が外側に向いていると、様子や顔色を伺うような雰囲気になります。
まずは落ち着いた安全な場所で、感覚の感度を上げてみましょう。
どの感覚でも使えますが、ここでは触覚を使います。
静かに、壁に触れます。
セラピストの場合は、皮膚にふれる時、壁に触れるのと同じことをやります。
こう意識します。
「指先が、手のひらが、壁に(皮膚に)触れている」
「壁が(皮膚が)わたしに触れいる」
次に、こう質問します。その感覚を味わい、言葉します。
「温かいですか、冷たいですか?」
「軽いですか、重いですか?」
「せまいですか?広いですか?」
「明るいですか?暗いですか?」
この意識と質問だけで、体は少しリラックスし、呼吸が深まることに気づくでしょう。
体は、「今ここ」にいることが好きなのです。
感覚の「差分」をとるとは、体が軽いか重いか、呼吸に変化があったか、などに気づくことです。
ごくわずかな、微細なほうが「取れ高」が大きいです。
次に、指先を壁から(皮膚から)、もっと奥に進めます。
力を入れるのではなく、指先が先に進んで、その奥に触れているようにイメージします。
指や手のひらは感覚に優れているので、フォーカスを界面から奥に移動させるだけで、受け取る情報を大きく変えます。
トレーニングしない限り、それをあまり知覚できないだけです。
指先を奥に進めて、質問します。
「温かいですか、冷たいですか?」
「軽いですか、重いですか?」
「せまいですか?広いですか?」
「明るいですか?暗いですか?」
さらに奥へ、さらに奥へ。
壁を抜けて、遠い青空まで触れるイメージを持つと、指先の感覚は明らかに変化しているでしょう。
「差分」がないと、感覚はそれが何かわからず、すぐに鈍麻します。
変化を感じ取れるようにしましょう。
慣れていないと、最初は何もわからないかもしれません。
自分ひとりでもできますが、わからない場合は、感覚のワークのためのセッションを受けにきてください。
これまで、感覚のワークショップや、一年かけて感覚を開くセミナーなどを開催してきましたが、みな驚くほど変わります。
さて。同じような静かな観察を、「思考」に向けることもできます。
それは次回の神経系でお話ししましょう。
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