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体のしくみとはたらき」 #2 感覚系 – 魂の迷子と、魂の砂漠

体のしくみとはたらき」 #2 感覚系 – 魂の迷子と、魂の砂漠

感覚系は、「五感」とも呼ばれ、「見る、触れる、味わう、聴く、嗅ぐ」ためのしくみを提供しています。

前回の外皮系は、体と環境との境界を形成するしくみで、乾燥と侵入による二つのアンバランスをお話ししました。

今回の感覚系は、環境からの刺激を感じ、それが何かを知覚するしくみです。

わたしたちは、機能の差こそあれ、誰もが世界を同じように見たり聞いたりしていると思っています。
脳の解釈や感情は人それぞれだけれど、「赤色は赤色、りんごはりんご」と、入ってくる情報は似たり寄ったりだと思い込んでいるかもしれません。
実はそうではなく、五感で受け取る段階で、多くの情報がフィルタリングされています。

五感についてのボディートークの格言は、「人は自分の都合の良いようにしか見聞きしない」。

これが、ケンカや誤解の元。

自己や他者への理解を深めるために、感覚系のはたらきを知ることは、とても大切です。

自分のニーズを知りたい
古い問題を解決したい
何か新しいことをはじめたい
あの人と理解し合いたい

そう願っているにも関わらず、フィルターのかかった小さな鍵穴から世界を見ていないとしたら、すごくもったいないですね
さらに、無意識の状態では、入ってくる感覚に対し、感情が自動的に発動するので、わたしたちはその情報に一喜一憂してしまいます。
境界を侵入された外皮系と同じく、外の世界に圧倒されている状態です。
これを、この記事では「魂の迷子」と名付けました。
反対に、何も入ってこない枯れた状態は、「魂の砂漠」です。

落ち込んでいたり、恐怖にかられていたりすると、エネルギーやインスピレーションが枯渇し、「魂の砂漠」に入り込みます。
今いる環境に慣れきって、飽き飽きしていても、感覚系は鈍ります。それを才能の枯渇のように感じるでしょう。

わたしは微細感覚のためのワークショップを開くのですが、そのときによく「イチローが打席に立つ時の感覚」のエピソードをシェアします。

イチローは、すべての打席で、彼のルーティンとして有名な一連の準備運動をして、ある感覚を呼び出すそうです。

通常、「やる気に満ちた気分」「最高のバッティングができた感覚の記憶」を呼び出すと思うでしょう。
わたしも最初、そう思いましたし、数十人の人に聞いても、正解はありませんでした。

正解は、「オリックス時代のプロ初打席の感覚」を呼び出す。
まさに「初心」ですね。

何の慣れも飽きもなく、相手投手をこうだと決めつけるような判断もなく、ただただ感覚が球場にいっぱいに開かれた状態。

こんな気分を意図的に呼び出すことを知っていたからこそ、何十年も野球を純粋に楽しんでこれたのでしょう。

感覚は、一度コツをつかむと、その設定を呼び出すことができます。
何に感度を上げ、何を遮断し、どんな気分でいるか。

次回の記事は、感覚系についての二つの具体的なセッションやワークの内容をお話しします。
一つは、「魂の迷子」から抜け出すための経路をバランスするセッション。
もう一つは、「魂の砂漠」から抜け出すためのワーク。

感覚系が更新されると、世界の色が鮮やかに変化してみえます。